【過去】掲載SNS 2022年1月
1月 SNS更新
皆様、こんにちは。お元気ですか?
先月は胃がん検診のお話をしました。今回は乳がん検診についてお話させていただきます。
乳がんはこの30年間で罹患数がおおよそ5倍に増加し(図1)、死亡数も増加の一途をたどっており、日本人女性の9人に1人が一生涯にかかると言われており(図2)、何よりも重要なのは早期発見であるとされています。
※島津製作所 ピンクリボン プロジェクトより 一部引用(https://www.shimadzu.co.jp/pinkribbon/)
図1.乳がんによる死亡数 「厚生労働省 2020年人口動態統計月報年計(概数)の概況」より
図2.部位別がん予測罹患数 「女性全がん2020」「がんの統計'21」より
枚方市では今年度より視触診が廃止となりました。それに伴い、今までは2回の来院が必要でしたが、1回の来院のみで受診が可能となりました。受診はしやすくなった事で、受診率は上がるのではないかと予想します。受診のしやすさ、受診率の上昇は早期発見の観点からもメリットと考えられます。しかし、視触診の廃止以外でのデメリットもあるのではないかと考えています。
まずは、視触診の廃止について、触れたいと思います。視触診の廃止の背景には、乳がんの早期発見の最適な検査方法であるとは言い難いというのが主な理由です。乳がん発見の契機となることはありますが、医師の確保の困難や技量のばらつきなど検診精度の面の問題点は以前より指摘されていました。また、近年ではマンモグラフィによる検診体制の整備状況も整ってきたため、必要性が薄れてきたのです。
検診における乳がん発見率は、マンモグラフィ約79%、超音波(エコー)約85%、視触診は約59
%と報告されています(※複数の報告の平均値を採用)。マンモグラフィに視触診を足すと約90%、マンモグラフィに超音波を足すと約97%にまで上昇するとの報告もあります。
では、視触診の廃止以外でのデメリットとは、なんでしょうか。それは2回目の受診時に追加されることの多かった超音波(エコー)検査の受診率の低下だと感じています。当院では、昨年までは乳がん検診は2回受診としており、1回目にマンモグラフィの撮影、2回目に視触診、結果説明、希望による超音波検査の追加撮影としていました。2回受診の不便さもよく耳にはしましたが、2回目に超音波検査の追加を希望される方は今年度より多くおられたように感じています。それぞれ検査には得意分野があり、マンモグラフィでは微細な石灰化の発見を、超音波検査ではしこりなどの小さな腫瘤の発見を得意としています。
前述したように、検診での乳がん発見率はマンモグラフィと超音波を合わせると約97%とかなり高くなります。また日本人は外国人より乳房の濃度が高い女性が多く(図3)、マンモグラフィだけでは発見できないこともあります。特に40歳未満の方は高濃度乳房の可能性が高い為、定期的な超音波検査をおすすめいたします。40歳以上の方は、2年に1回の乳がん検診に合わせて超音波を受けていただくか、間の1年で超音波検査と乳がん検診を毎年交互に受けていただくことをおすすめいたします。当院での超音波検査はエコードック¥5,500、検査時間は10分程でお着替え等を含んでも1時間かからない検査となります。
図3. 高濃度乳房 がんも白いので見つかりにくい(乳腺が多いと白くなる)